苦痛を伴うネガティブな感情を招く「考え方の癖」
【記事を書いた人】 カウンセリングオフィス トリフォリ 高澤信也 福岡で子育てと生きづらさ克服をお手伝いしています。 公認心理師。 |
私たちには皆
*考え方の癖
というものがあります。
ある5人が全く同じ状況にあっても
その状況を「どう解釈するか」は
人によってまちまちです。
たとえば
ストレスの真の引き金は出来事ではない
同僚に挨拶したのに返事がなかったという状況に次の5人がいたとします。
そのとき、、、
Aさんは腹を立て
Bさんは落ち込み
Cさんは穏やかで
Dさんは心配し
Eさんは恥を感じました。
全く同じ状況なのに
どうして感情的な反応が違うのか。
その「出来事」と「反応」の間に
*認知(思考)
というものがあるからです。
認知とは、ものの見方・捉え方、解釈、
意味づけ、イメージ、記憶などといった
頭の中で起こる思考を指します。
その認知が5人とも異なるから
結果としての感情も違うというわけです。
たとえば、、、
Aさんが怒りを感じたのは
「俺のことバカにしやがって!」
Bさんが落ち込みを感じたのは
「私のこと嫌いなんだ」
Cさんが穏やかなのは
「聞こえなかったのかも」
Dさんが心配を感じたのは
「疲れて余裕がないのかな?」
Eさんが恥を感じたのは
「挨拶もしてもらえないダメな私」
などといった認知があったからかもしれません。
こんなふうに
各々の認知(捉え方)が違うと
結果として感じる感情も
違ってくるものなのです。
認知の偏りリスト
私たちを苦しくする認知の癖には
次のようなものがあると言われています。
①全か無か思考(二分法的思考)
物事を「全」か「無」かの二つで捉える考え方
例)「テストで80点しかとれなかった。これじゃ0点と同じだ」
②べき思考
自他に道徳的・倫理的尺度で「~ねばならない」と要求する考え方
例)「絶対に誰からも嫌われてはいけない」
③過剰な一般化
理由が不十分な状態で結論を出す考え方
例)「挨拶したのに返事がなかった。きっと嫌われてるんだ」
④ラベリング(レッテル貼り)
ある部分を全体化して意味づける考え方
例)「あの人は空気が読めない。きっと発達障害だ」
⑤感情的理由づけ
事実やデータではなく感情を根拠とした考え方
例)「私は傷ついた。だからあの人は悪い人に違いない」
⑥結論の飛躍
あるデータから極端な結論を導き出す考え方
例)「ずっとひとりぼっちだった。ということは死ぬまで私はひとりぼっちだ」
どうでしょうか。
あなたにもこういった癖があるでしょうか。
ちなみに上記のほかにも
・メンタルフィルター
・マイナス化思考
・拡大解釈/過小評価
・個人化
といった認知のゆがみがあると言われています。
【おまけ】
認知のゆがみ(考え方の癖)について
詳しく知りたい方は次の書籍をご覧ください。
↓
ストレス反応に対処する
ではこのリストを使って
普段のストレスに対処する流れを
簡単にご紹介いたしますね。
ストレスに気づいたら、、、
①その出来事を具体化して書き出す
例)
・夕食のときに
・リビングで
・子どもの学校のことを夫に相談していたら
・夫が「子育てはお前に任せてるから」と言って自分の部屋に行こうとした。
よく言う5W1Hで書くといいですね。
但しWhy(なぜ)は認知なのでここでは書き込み不要です。
②その時に感じた感情を書き出す
できれば感情の強さも書き出しておく。
例)怒り(80%)
③その感情に影響を受けた行動を書き出す
例)「私にばっかり押し付けないで!」と夫に怒鳴った
④感情の元になった認知を探索して書き出す
例)「もっと協力すべきでしょ!」
「私の苦労を何一つわかっていない!」
「あんたなんか役立たずのダメ夫だ!」
⑤自分の認知が先のリストの何に該当するかチェック
(上の3つは上から順に)
・べき思考
・過度の一般化
・ラベリング(レッテル貼り)
ここまでを全部表に書き出すとこんな感じです。
●出来事・状況
昨日の夕食のとき、リビングで子どもの学校のことを夫に相談したら、夫は「子育てはお前に任せてるから」と言って自分の部屋に行こうとした。
●認知
「もっと協力すべきでしょ!」
「私の苦労を何一つわかっていない!」
「あんたなんか役立たずのダメ夫だ!」
●感情と行動
怒り(80%)
「私にばっかり押し付けないで!」と夫に怒鳴った
今日からできるストレス対処
ここまでをしっかり探索して書き出せると
それだけでストレス反応が和らぎます。
友だちやカウンセラーに嫌だったことを
聞いてもらえると、事態は変わらなくても
気持ちはスッキリしますよね。
それと同じ効果が得られます。
ここまでできたらあとは
*気持ちが落ち着くこと
*いい感じを感じること
をたくさんやってみてください。
私がよくやるものはたとえば
・奥さんに話を聞いてもらう
・美味しいご飯を食べる
・好きな歌を聴く
・息子をハグする
・自分に「よくやってる」と声かけ
・暖かい飲み物を飲む
・星空を見上げる
・深呼吸をする
etc.
こういったものを
*ストレスコーピング
と呼びます。
ストレスコーピング(略称:コーピング)は
自分でストレスを緩和するための対処策のこと。
このコーピングを活かすコツは
*ちっちゃいものを
*たくさん
やること。
そのとき
*なるべくコストがからない
*副作用がない(少ない)
*意識して実行する
となお効果が上がりますよ。
まずはここまでを徹底してやると
それだけでも
*レジリエンス(心の柔軟性)
は増していきます。
つまり生きやすさを増やせるのです。
デメリットとメリット
とはいえどんな策にもデメリットがあるように
今回お伝えしたものにもあります。
それは
・繰り返しの練習が必要なため
・即効性がなく
・変化が体感しにくい
ということ。
その一方でこんなメリットがあります。
・お金が大してかからず(タダのものも多数)
・一つ一つを実行する労力もさほどかからず
・習慣化により定着すれば自動化する
ということ。
一見すると対症療法にように見えますが、
継続して定着を図ることができると
ストレス耐性を底上げしてくれますよ。
とはいえ最初からきっちり
やろうとすると挫折しがちです。
今日の自分にできることから
やってみてはいかがでしょうか。
まとめ
では最後に今回お伝えした
ストレス対処の流れをまとめます。
ストレスに気づいたら、、、
①引き金になった出来事を書き出す
②その時の感情を書き出す(強さも)
③その時の行動を書き出す
④感情につながった認知を探索して書き出す
⑤認知のゆがみリストから当てはまるものを選ぶ
・・・全部を書き終わったら・・・
⑥自分をいい感じにするためのコーピングを実践
以上です。
これである程度の日常のストレスは
緩和することが十分可能です。
その先には
・認知を書き換える
・認知を手放す
・感情にあえて浸って消化する
・ストレスのきっかけとなった問題を解決する
・身体を神経レベルから落ち着かせる
などといったパワフルな技法もあります。
ではありますが、今日ご紹介したものから
始めるだけでも十分効果は得られると思います。
そのパワフルな技法については
また別の機会でご紹介できればと思います。
ではあなたの健闘を祈っています!