どうしてか子どもの頃「自分にはできない」とか「役立たず」という声がよく頭の中で鳴り響いていました。
その声がすごく苦しくて、自分に「できない自分であってはならない」という禁止を科し、必死に「できる自分」になろうとあがいていました。
それでできるようになったことが増えはしたものの、「できない自分」に対する恐怖は日に日に強まるばかりでした。
必死に「できる自分であれ」とあがいてもできないことはたくさん。
できない自分を隠したり、できる”フリ“をしたりと、そっちにエネルギーを使うことに大忙しで心は慢性疲労状態でした。
ACにとっての無力感
ACの特質のひとつに「無力感」があると言われています。
自分の力を値引きする習慣と言ってよいかもしれません。
・そもそも自分が何かをうまくやれる気がしない
・人から「できてるよ」と言われても全然足りない気がする
・自分がやっていることでも他の人ならもっとうまくやれる気がする
・基本的に自分は「できない人間」な気がする
当時の私もこういったことを心底信じていました。
必死に隠していましたが、心のうちでは「できない自分」が露呈することにいつも怯えていました。
無力感をもった原因(仮説)
何が人に「自分は無力」と感じさせるのか?
AC支援の立場では
*過去に力を奪われた影響
という視点で捉えています。
家庭、地域、学校、その他で起こった子ども時代の逆境体験によって圧倒され、自分のパワーを信じられなくなった…という意味です。
たとえばシンジさんは幼少期からずっと「お前はダメだ」「何もできない」と言われつづけていました。
頭では「そんな嫌なこと言う親のほうがおかしい!」と思っていても、心の奥ではそれを信じ込んでしまい、大人になっても「自分はダメだ」「役立たずだ」「無能だ」と自分に言い続けていたとのことです。
非常に残念ですが、こういった力を奪われる体験によって「無力感を学習」した子どもたちが、大人になっても生きづらさを感じてしまうことは自然な結末なのかもしれません。
そもそも何が問題か
問題解決の世界では「原因を発見できれば8割がた解決」と言われます。
つまり「何を問題とみなすか」によって解決は大きく左右されることになります。
たとえば
①あることを”できないこと”自体が問題とみなされると、「できるようになること」がゴールになります。したがって方向性は「できるように頑張る」。
②「私にはできない」という”思考”(思い込み)が問題とみなされると、「その思考を見直す(もしくは手放す)こと」がゴールになります。したがって方向性は「認知の修正もしくは認知と事実の分離」。
③「自分はできない人間」と”思い込んでしまった体験(たとえば生育歴、いじめ体験など)の影響“が問題とみなされると、その「影響の具体化と処理」がゴールになります。したがって方向性は「原因と思しき体験の探索と影響の整理」。
何を原因と見なすかによってゴールは変わります。ゴールが変わると方向性も変わります。
第4の選択
先の3つの選択肢はどれが正しくてどれが間違っているという類のものではなく、その人にとって「どれが有用か」という視点次第で「正しさ」は変化するのではないでしょうか。
ところで個人的にはそこに付け加えておきたい第4の選択肢があります。
それはできない自分を許すこと。
あることが本当にできなくてもその不完全な自分を慈しむことです。
これを「自己慈悲(セルフコンパッション)」といいます。
この自己慈悲ができると、今の自分を受け入れることができます。
今の自分を受け入れることができると、「自分にできること」「自分が持っているパワー」に焦点を当てることができます。
そこに焦点を当てることができると、人と比べずに済むようになり、自分が持つ資源(自分らしさ)が活用できるようになり、それが世のため人の役に立ち、その結果無力感から少しずつ解放されていきます。
私たちにできることは、100ではないけど、0でもありません。
たとえ1や2程度と少ないとしても、それをどう活かすかが重要です。
自分を活かすことができたら、その時には“生かされている意味”なんてことも感じられるのではないかと思います。
自分がもつリソース
リソースとは「資源」のことです。
私たちがガソリンだとしたら、リソースは石油です。
石油は精製されるとガソリンをはじめいろんな燃料を生み出すことができる大いなる資源です。
これと同じで私たちにも未精製の石油(=ゴツゴツした岩の塊)のようなパワーの源が必ずあります。
しかもそれは「ふつう」と思っていること、時には「欠点」「問題」と思っているもののなかにも結構隠れていたりするものです。
その素晴らしい資源を眠らせておくのはあまりにもったいないですよね。
それを掘り起こすための自問自答を2つ考えてみましたので、活用できそうでしたら使ってみてくださいませ。
Q)「これまでに最も時間とお金をかけたことは何ですか?
どんな目的のためにそこまで費やすことができたのですか?」
Q)「苦しい子ども時代から今日まで生き抜くことができたのは、あなたのどんな力のお陰ですか?」