こんにちは。公認心理師の高澤信也です。
みなさんはHSPという言葉をご存知でしょうか?
Highly Sensitive Personの頭文字を取った言葉で、非常に感受性が高い性質を持っている人たちのことを指します。
最近立て続けに4〜5人のクライエントさんから「HSPかもしれない」という訴えを受けました。
立て続けだったのが不思議でしたが、最近テレビや新聞などで特集(?)があったと教えてもらいました。
ところでHSPの方は、脳の中にある「感じる」ためのセンサーが刺激を検知する性能が抜きん出ていることが特徴です。
したがってHSPでない方なら普通は気づかないようなことにもたくさんのことを「感じる」ことができます。
しかしその感じる力の鋭さは、一方で当事者を苦しめます。
HSP当事者の苦悩
突然ですが、家の壁や天井に設置してある火災を検知するためのセンサーを思い出してみてください。
そのセンサーは本来火災を検知してアラームを鳴らすものですが、もしそれがライターの火を点けただけでアラームを鳴らしたらどうでしょうか。
センサーの感度を下げてあげる必要がありますよね。さもなくばしょっちゅうアラームが鳴り響くため、そのままでは家庭内の生活に支障が出てしまいますから。
HSPの方は脳内にあるこのセンサーの感度が高く、いろんなものを「感じる」ため、次のような傾向があると言われています。
●物事を本質的に深く考える(その分浅い話を好まない)
●気づきの精度が高いため情緒豊か(その分疲れやすくもある)
●他者の感情も豊かに感じる高い共感性(その分人に振り回される)
●五感が鋭い(その分外的刺激に影響を受けやすい)
感じる力は情緒の豊かさという力である一方で、スルーしても問題ない刺激まで検知してしまうことで苦しみを抱えるという側面も持っています。
当事者の苦悩をこんな例えで想像していただけるでしょうか。
周りの人はテレビのボリュームが20でちょうどいいとしたとき、あなたにとってはそれが30や40の大きな音として聞こえたらどうでしょうか。しかもそれがいろんな場で起こる。
そういった状態が日常生活のいろんな場で起こるわけですから、当事者の苦悩は想像に難くないのではないでしょうか。
HSPの後天的影響
HSP提唱者のエレイン博士によれば、5人に1人がこの傾向を持って生まれてくるとのことです。
関連著書をいくつか読んでみましたが、それは生得的であるため根治治療は存在しないようでした(もっと探せばあるのかもしれませんが)。
生まれながらに敏感ということになると、赤ちゃんの頃から反応もその分大きいということになります。
「大したことないこと」にも反応するわが子を育てる親の中には、時に「過剰」「臆病」「手がかかる」「育てにくい」とみなす人も少なくはないでしょう。
その結果本来は力とも言える繊細さが正反対の「問題」とみなされます。つまり「制御すべきこと」に位置づけられるわけです。
そうなるとその子の繊細さが親の目に映るたび、それを抑えよう、変えようとして批判されてしまうかもしれません。
批判された子は自分の繊細さをどう思うでしょうか。
「こんな反応はよくない」「そんな反応をする自分はダメ」と誤って信じ込んでしまっても不思議ではありません。
結果、アダルトチルドレン当事者と同じように
●脅威に対する過敏さ
●自分という存在を尊重することの困難さ
を抱えてしまうことでしょう。
HSP+アダルトチルドレン
私たち一人一人が持つ傾向や特徴をパーソナリティと呼んだりします。性格という言葉の方が理解しやすいかと思います。
このパーソナリティは次の2つの相互作用によって出来上がります。
①生まれ持った性質(生得的気質)
②養育者の情緒的関わり(後天的環境)
敏感さ、繊細さが上記①に由来するものであれば、それがHSPに該当するでしょう。
一方で“脅威“に対する過敏さが②に由来するものであって、それが家庭由来であれば、それがアダルトチルドレンに該当するのでしょう。
ここまでの話を総合して鑑みると、HSP当事者でありつつ、アダルトチルドレン当事者でもある方は決して少数ではないと感じています。
中でも
脅威に対する神経システムの過敏さ
は両者に共通する苦しみと言えると思います。
生まれ持ったHSPという性質に加え、家庭環境によってそれを強めてしまったAC(アダルトチルドレン)双方の困難を有する人のことを、勝手ながらHighly Sensitive Adult Children【HSAC】などと呼んでいます。和名である「敏感すぎる人」ならぬ「敏感すぎるAC」という意味です。
名前がなんであろうと、神経レベルで感じる苦しみはそのまま生きづらさに直結します。
自分をなだめるためのセルフケア
私が読んだ書籍や調べた情報に限定されますが、ほとんどのソースにHSPの過剰な神経的な反応は変えられないと書いてありました。生まれ持った性質だから、工夫して対処していこうという記述がほとんどでした。(理解不足だったらすみません)
しかし、幼少期の家庭でトラウマを負い、脅威を検知する神経システムは過敏になり、穏やかさを感じる神経システムは発達が阻害されたアダルトチルドレン当事者であっても、その反応を穏やかにしていくことができるセルフケアはあります。
*今流行りのマインドフルネス
*ポリヴェーガル理論に基づく神経エクササイズと呼ばれるもの
*以前から広く活用されている腹式呼吸や筋弛緩法
これらのセルフケアは脅威の検知を適度に調節してくれる
★安心、安全、穏やかさ、心地よさを感じる神経システム
を育ててくれると言われています。
こういったものがHSPの方の助けになると断言はできませんが、苦しみの仕組みがアダルトチルドレンと共通するものであれば、やってみる価値は十分あると思います。
些細な音や刺激でビクッとなる体の反応はつらいものです。敏感さがもっとも過度になった20数年前の私は、横で新聞をめくられる音でつらくなったこともありました。
美しさへの感受性、他者への共感性の豊かさはそのまま活かしながら、苦しみにつながる敏感さは先のような手立てでほんの1ミリでも和らいでいくことを願っています。
トリフォリには現在HSPとアダルトチルドレンの双方の影響を抱えるクライエントが複数おられますが、セルフケアの継続によって敏感さが楽になってきたという報告をくださった方もいます。
HSP特有の苦しみを100%取り除いてくれる秘策はない。
だからといって「先天的だから和らぐ可能性0%」というわけでもない。
これが支援活動で感じる実感です。
あなたも神経的な反応の過敏さでお困りであれば、試しに一度ご相談においでください。より良い道を一緒に探索していきましょう。