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真のアンガーマネジメント。なだめるべき感情は怒りではなく◯◯◯
【記事を書いた人】 カウンセリングオフィス トリフォリ 高澤信也 福岡で子育てと生きづらさ克服をお手伝いしています。 公認心理師。 |
アンガーマネジメントとは
この言葉をご存知でしょうか。
簡単に言えば「怒りの感情の処理」のこと。
この方法で怒りに苦しまなくなった方がいる一方で、
実践者の方たちからはこんな意見も散見されます。
「その場はうまくいっても何回もぶり返す」
「うまくいかない自分に逆に腹が立ってしまう」
「対症療法にはなっても本質的に改善しない」
この方法が奏功しないとき、
そこには明確に理由があります。
それは、
なだめるべき感情は怒りではない
ということ。
今回はそれを詳しくお届けします。
無愛想な店員さんへの怒り
今朝の私のほやほやの怒り事例です。
週に1回は訪れるあるお店、
そこはとても静かで居心地が良く、
お店の方も感じよくてお気に入り。
それが今朝の店員さんは大違い。
ろくに挨拶もなく、
話してもボソボソ何言ってるか分からず、
顔には「あーめんどくせー」というテロップが
流れてると思えるほどめっちゃ無愛想。
食事を持ってきたときにも特に言葉もなく、
テーブルにドン!と置いて立ち去った店員さん。
その店では初と言えるほど
めっちゃイラってなってしまいました( ̄▽ ̄)
頭の中には吹き荒れる批判の嵐。
「は?その態度なに?」
「さすがに酷すぎん?」
「あんまりやん!店長呼べー!!」
などなど^^;
店員さんは奥へと去り、
食事を前にしても怒りが収まらない。
勢い余った私は「お客様の声」シートを手に取り、
コメントという名の反撃文を書き書き。
それを渡すか渡さないかを
考えている間に消費した時間約10分。
そこでようやく気づきました。
「ハッ!ヤバい!ぐるぐる思考に飲み込まれてる!」
ここで必要なことは
⚫︎無愛想な店員さんを変えること
ではなく
◎自分の中の怒りを消化すること
ここでようやく怒りの発散モードから
消化モードにシフトできました。
まず自分を落ち着かせる
脳の仕組み上、怒りに飲み込まれてしまうと
健全な思考(理性)が機能してくれません。
まずは怒りという感情を鎮める必要があります。
そこでまず、頭の中でループ上映され続けている
「無愛想な店員さん」イメージを手放すことに
取り組みました。
①身体の力を抜いて2〜3回大きく深呼吸(ため息も可)
↓
②周りを見渡して目についたものの名前を片っぱしから素早く(心で)声に出す
(例:天井!テーブル!窓!メニュー!花!電気!などなど)
↓
③怒りが少し鎮まってきたら身体の反応を観察する
(呼吸は?筋肉の緊張は?皮膚の温感は?喉や胸の状態は?内臓の感覚は?)
↓
④吸う息でその反応している部分に新鮮な空気を送り込み、吐く息では怒りの感情を外に出すイメージでゆったりと深呼吸を続ける
*注:途中で怒りの元になった相手に意識が持っていかれたら、またゆっくりと体に意識を向け直す
これでようやく落ち着きが戻ってきました。
私を怒らせたものは「べき」
怒りという感情は
相手に対する期待が満たされなかったとき
に湧いてくる感情です。
したがって怒りの元を探索するには
*自分は相手に「何を」「どの程度」期待したのか?
を自問自答することが役に立ちます。
それをやってみた結果は、、、
「店員たるもの、いつも、誰に対しても、どんな時も、もっと顧客に愛想良く振る舞うべき!」
さらにその「べき」を満たさなかった相手に
「それができないなら店員失格!」
とジャッジまで付け加えていた始末。
怒りの炎を自分で焚き付けていたようです。
相手への期待値を適度にする
自分の期待値がはっきりしたら、
次はそれを見直す段階です。
ここで大切なことは
*その期待値は適切か?
という視点。
店員さんは愛想がいいほうが望ましいですが、
そうでない店員さんも世にはたくさんいるし、
普段は感じが良い店員さんであっても
心の状態次第で無愛想になることもあるもの。
ということで、期待値を見直してみました。
その結果はこんな感じです。
「できれば店員さんには愛想良くしてもらいたい。そうしてくれた方が気持ちいい。私は無愛想はやっぱり好きじゃない。
とは言っても、店員さんがそれに応えなければならないという法律はないもんね。応えてくれたらありがたいけどさ。
私は無愛想が嫌い。でもあの店員さんには『愛想良い接客』は難しかった。それだけのことだったんだな」
ここでようやく
「怒り」という不健康でネガティブな感情が
「残念」という健康でネガティブな感情に
切り替わりました。
期待値を見直した後は自己慈悲
怒りは鎮まり、
残念という感情に変わったものの、
まだ少しくすぶっている嫌な感じ。
そこでそのくすぶりの最終処理に取り組みました。
それは
*怒りや残念さを感じる自分に慈悲を与えること
そこで人生において最も慈悲的に接してくれた
祖母のことを思い返しました。
「つらい時にばあちゃんだったらなんて言ってくれるかな?」
と(理想込み込みで)想像してみました。
優しい顔の祖母を思い浮かべながら、、、
「無愛想は嫌やったね。残念やったね。嫌いなものは嫌いでいいとよ。店員さんに怒りぶつけたかったのをちゃんとがまんしたね。よく頑張ったね。偉かったよ。よしよし」
「ばーちゃーーーん!!」
と涙ぐむおじさんの私。
ここまでくると怒り自体がどうでもよくなっていて、
むしろいい感じ。
まさに“癒し“の感覚でした。
怒りの処理のまとめ
今回の怒りの処理をまとめるとこんな感じです。
①1秒でも早く自分の怒りに気づく
↓
②力を抜いて2〜3回大きな深呼吸orため息をつく
↓
③周りを見渡して目についたものの名前を声に出す
↓
④身体に意識を向けて身体の反応を観察する(その間ゆったりと深い呼吸を続ける。意識が思考に向いたらまた体に戻す)
↓
⑤落ち着いたら自分の期待値に気づいて見直す
↓
⑥最終処理として自分に慈悲を与えてくれる存在をイメージして、その存在から慈悲の言葉をもらっている様子をありありとイメージする
(慈悲の存在は、実在してもしていなくても、人であってもなくてもOK)
これを続けるほどに
*怒りの湧きにくさ
が定着してくるのでオススメです。
怒りは偽物。本物の感情とは?
ところで人は怒っているとき、
無意識の内に心の奥底では
実は怒りではない感情を感じています。
それは
「悲しみ」です。
相手が重要他者であるほど
その悲しみは深くなります。
・尊重してもらえない悲しみ
・守ってもらえない悲しみ
・理解してもらえない悲しみ
・絆を結んでもらえない悲しみ
しかし悲しみではパワーが出ないので、
私たちはそれを怒りにすり替えるのです。
その怒りを使って、
尊重、保護、理解、絆…
を相手から引き出そうとします。
しかしこの怒りは悲しみを隠すための偽物。
使えば使うほど
それは敵意や攻撃として伝わり、
引き寄せたいものを遠ざける一方です。
今回お伝えした怒りの処理において
最終段階で慈悲が必要な理由がここにあります。
必要なことは偽物の怒りの奥にある
◎本物の悲しみを癒すこと
だからこそ悲しみを癒す
*慈悲の言葉
が欠かせないのです。
真のアンガーマネジメントとは
今回の記事はいかがだったでしょうか。
怒りの多くは偽物の感情で、
本物の多くは悲しみでした。
だからこそ怒りの処理の後には
悲しみの処理が欠かせないことも
お伝えしました。
そしてそれに資するものが
*慈悲
ここに辿り着いてようやく
*真のアンガーマネジメント
が果たされるのだと思っています。
怒りを感じることが多い方ほど
心臓や血管に無用な負荷を与えることは
多くの方がご存知かと思います。
(かつての私は完全のこれでした)
一度きりの人生において
心も身体も穏やかに過ごすためにも、
怒りのセルフケアの大切さを痛感する日々です。