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考え方の癖を見直す:ハナコさんの事例「子どもから責められている気がした時の怒り」
【記事を書いた人】
カウンセリングオフィス トリフォリ 高澤信也 福岡で子育てと生きづらさ克服をお手伝いしています。公認心理師。 |
おはようございます。カウンセリングオフィストリフォリの高澤です。
今日の「考え方の癖の見直し」は、クライエントさんから語られるありがちなストレス反応の事例です。
先日ハナコさん(仮名)にはこんなことが起こりました。
出来事と感情
いつものようにコラム表内の出来事と感情から書いていきます。
【出来事】
息子に頼まれていたノートを2回買い忘れた。それを息子に言ったら、「えー、また忘れたと?」と言われたとき。
【感情】
怒り(85%)
腹が立ちすぎて「そんな責めんでもいいやろう!お母さんは忙しいと!あんたみたいに暇じゃないと!」と大声で怒鳴った、とのことでした。
認知(自動思考)の探索
続いていつものように認知探索のための自問自答ですが、今回はハナコさんバージョンです。
自問)「息子のあの言葉をどんな意味に解釈したの?」
↓
自答)「なんとなく責められてる気がした」
自問)「なんと言って責められてる気がした?」
↓
自答)「『親のくせに何もできてない』とか、『ダメ親だ』とか、『なんでこんな家に生まれたんだ』とか心の中で思われてる気がした…」
自問)「もしほんとうにそう思われていたら、どうなるの?」
↓
自答)「私はダメ親。母親失格…」
自問)「母親失格のダメな親ってどういう意味?」
↓
自答)「私があの子を苦しめている。全部私が悪い」(苦痛で落涙)
ここまで深めたところ、ハナコさんが感じていた感情は怒りではなく、その下に隠れていた存在の恥(シェイム)でした。
強さも100%とこれ以上ない強さ。ハナコさんにとってこれは非常に苦しい状態だったのです。
ここまでをコラム表で整理
ではここまでをコラムで整理してみます。
【出来事】
息子に頼まれていたノートを2回買い忘れた。それを息子に言ったら、「えー、また忘れたと?」と言われたとき。
【認知(自動思考)】
表面的な認知は
「責められた」「私の苦労をわかっていない」
↓
それを深掘りしたことでわかった認知は
「私があの子を苦しめている」
「全部私が悪い」←ホットな認知
【感情】
最初に認識されていた感情は
怒り(85%)
↓
深掘りした結果出てきた感情は
シェイム/存在の恥(100%)
奇しくも前回のコラム表と非常に似た結果になりました。
↓
適応的思考の創出の流れ
ではハナコさんが先の苦しい認知をどのようにバランスの良い考えに変えていったかをお届けします。
自問)「なぜ全部自分が悪いと思うの?」
↓
自答)「今日だけじゃない。これまでにも何度も子どもを困らせた。迷惑かけたの1回や2回じゃない。でもよそのお母さんはそんなことないって聞くし」
自問)「ほかにもある?」
↓
自答)「そういえばこの前友だちのお母さんのことを『なんでもできて、すごいっちゃん』って褒めてた」(またもや涙ぐむ)
自問)「でもさ、そうとは言い切れない理由もあるんじゃない?」
↓
自答)「確かに。大体もう小学生なんだから、ノートくらい自分で買いに行けばいい。それなのに行ってないし。それに、子どものことが何でもかんでも母親のせいっていう道理はないし。
だいたい夫は父親として子どもにちゃんと向き合ってない。そのくせ何かあると『母親だから』なんて言ってくる。それっておかしいよね」(ここでぐっと背筋が伸びる)
自問)「了解!色々あったね。じゃあさ、これを全部まとめて考えてみて、自分を助けられる考えが出せない?もしできるなら、誰かのせいにしない考え方で」
↓
ここでハナコさんは新しい認知を創り出しました。それも込みでコラム表を埋めていきます。
5コラムにまとめる
【出来事】
息子に頼まれていたノートを2回買い忘れた。それを息子に言ったら、「えー、また忘れたと?」と言われたとき。 |
【認知(自動思考)】
「全部私が悪い」←ホットな認知 |
【感情】
存在の恥(100%) |
【適応的思考】
「確かに2回も買い忘れたのは申し訳なかった。でももうあの子も小学生だから、自分のことは自分でさせていいね。
そもそも子育ては夫婦でやるものだから、これからは夫にも協力してもらおう。そのほうが親子のつながりが増えていい感じだし。
私も自分を『全部悪い』みたいに大雑把に責めるのはもうやめる。だって人間だもん。完全にはなれないよ。
これからは失敗しても、行動だけ見直せば十分だよね」 |
【変化した感情】
シェイム(100%) ↓ 申し訳なさ(40%) |
まとめ
今回のコラムはいかがだったでしょうか。
ハナコさんが自問自答でここまでできるようになったのは、日々繰り返して練習した成果です。
自分の内側に向き合うのはしんどいし、勇気も必要です。でも一方で、その先に心の穏やかさが徐々に広がってもくれます。
とはいえ無理は禁物ですよね。だから今日の自分にできる最善だけ尽くせば十分ではないかと思っています。