毒親卒業トレーニングブログ管理人 兼 アダルトチルドレン支援カウンセラーの高澤です。
先日かかりつけのお医者さんのところに診察に行ってきたときのことです。
いつも穏やかで、親身になってくれて、それでいてちゃんと診てくれる先生が大好きだったのですが、家の事情で病院長を勇退するとのことでした。
そのときに感じた感情を題材に今日のテーマをお送りします。
誰しも避けられない苦しみ
仏教用語に四苦八苦という言葉があります。
四苦とは
・生きていること。生きているから人は苦しみを感じます。
・老いること。年をとることとは「喪失」という苦しみの連続です。
・病気になること。不快さや痛みがつづく苦しみです
・死ぬこと。人が最も恐れる苦しみです
それに次の4つを加えて八苦になります。
・怨憎会苦:嫌いな人・憎い人に会わないといけない苦しみ
・愛別離苦:愛する存在を失う苦しみ
・求不得苦:欲しいものを求めても得られない苦しみ
・五蘊盛苦:五感が盛んであるほど快を感じられる一方で苦しみも感じやすくなるという苦しみ
今回の私はこのうちの「愛別離苦」でしたが、この四苦八苦は誰にも避けることができない苦しみと言われています。
しかし以前の私は、この愛別離苦に限らず、いずれも「絶対に受け入れたくない!」「避けたい!」「取り除きたい!」ともがいていたように思います。
変えられないものを変えようとしていたことで、ずっと苦しんでいた気がします。
「変えられるもの」を変えていく
だったら私はどうすればよかったのでしょう?
苦しみ真っ盛りの頃には知る由もなかったのですが、そのヒントは『平安の祈り』の詩の冒頭にありました。
*自分に「変えられるもの」と「変えられないもの」を見分ける
*「変えられないもの」はその事実を受け容れる
*「変えられるもの」は勇気をもって変えていく
ということで、もし今回の愛別離苦が苦しいのなら、、、
①四苦八苦のひとつ「愛する人との別れ」という“出来事”は苦しい。でも誰もそれを避けることはできない。つまり苦をもたらす”出来事“は「変えられないもの」。嫌でも受け入れざるを得ない。それが起点になる。
↓
②“出来事”は変えられなくても、苦しみという“感情”は消化することができる。つまりそれは「変えられるもの」。それを変えていけば苦しみは緩和されていく。
↓
③感情的な苦しみは「避ける」「取り除こうとする」とかえって強まるが、「ドンと来い!」の心構えで感情と向き合い、しっかり感じ切ると消化されていく。ここに勇気をもって取り組めばOK。
(但し喪失した存在が大きいときは「日にち薬」も必要)
当時の私のやり方とは正反対ですね。残念_| ̄|○
ホンモノの感情を見えなくするニセモノの感情
先の流れに示唆をもらい、何をどうすればいいかがはっきりしました。
あとは実行あるのみ!です。
しかしここでよくある障害物がひとつ。
それが感情を避けよう・取り除こうという意図を持った「思考」です。
愛別離苦の話で言えば、一人目の奥さんと離婚した(注:私、バツイチです)とき、純粋に悲しんだかというと全然そうなりませんでした。
ある時は「あいつはひどい!」と相手を責めては”怒り“を
ある時は「自分はダメな人間だ…」と自分を責めては”恥“を
ある時は「悩んだってしょうがない!」と抑圧しては”無感情“を
ある時は「生きていてもしょうがない…」と諦めては”絶望“を
すべて感情による苦しみですが、いずれも「思考」によってねじ曲げられたもの。思考でねじ曲げる目的は、「この苦しみを1秒でも早く取り除きたい!」だったと後になって気づきました。
ホンモノの感情
ではこの時のホンモノの感情は何だったのでしょう。
それはごくごくシンプルなものでした。
⚫︎大切な人を失ってしまった”悲しみ“
⚫︎そばにいるのが当たり前だった人がいない”寂しさ“
思考でねじ曲げることさえしなければ、こういった「ホンモノの感情」はちゃんと出てきてくれます。
そしてそれをしっかり感じ切ることができれば、この苦しみは取り除かれていくようにできています。
感情は私たちを苦しめるものではなく、助けてくれるものなのですから。
感情に気づく練習
しかしどうしても
・思考経由の「ニセモノの感情」のほうに馴染みがある
・そもそも自分の感情がよくわからない
・”感じる“という感覚自体がよくわからない
といったこともあるかもしれません。
そんなときは次のような練習がオススメです。
①ストレス状態に気づく
(それもよくわからない時はざっくり「快か不快か」だけ気づく)
↓
②思考に囚われがちな意識を「身体反応」に向ける
(但し、意識を身体に向けること自体が苦になる方はこの練習はしないほうが安全です)
↓
③時々刻々と変化していく身体反応を観察する
(例:呼吸の状態は?筋肉の緊張は?内臓の感覚は?皮膚の感じは?)
↓
④感情に気づいたら(気づきが弱くてもOK)感情言葉を口に出す
(悲しい、怖い、腹が立つ、寂しい、嫌だ、悔しい、恥ずかしいなど)
↓
⑤その感情をしばらく味わう
(意識が思考に逸れたらまた感情に戻す)
↓
⑥感じている“身体”をケアしてあげるような気持ちでゆったりと呼吸し身体を緩める
感情とは言わば身体の反応の集大成のようなものですから、身体に意識を向け、観察できるようになることで、自分の「ホンモノの感情」にも気づきやすくなると思いますよ。
但し、身体反応に注意を向けるだけで苦しくなるケース、感情を感じること自体が脅威になっているケースなどもありますので、”嫌な感じ“の苦しみがちょっとでも増えるようなら即座に中止してくださいね。
そのときはもっと安全な方法に切り替えた方が望ましいと思います。
ある程度自分の感情を抱えることができる状態になってから、この練習に取り組んでみると効果が実感できると思います。
それでは健闘を祈ります!